アトピー性皮膚炎は、憎悪と軽快を繰り返す痒みある湿疹を主病変とする疾患で、その代表的な症状は「かゆみ」、皮膚の乾燥や赤味です。
皮膚が乾燥して赤くなり、やがて湿疹や丘疹ができ、かゆみが出始めます。
かゆみが強くなり掻きこわすことで皮膚や湿疹が傷つき、ジュクジュクと湿潤したり、かさぶたができたり、徐々に皮膚が厚く、硬くなることもあります。
かゆみのストレスからイライラしたり、精神的に不安定になったり、かゆみで夜も眠れず不眠症になることもあります。
アトピー性皮膚炎の症状は左右対称に出やすく、年齢によって好発部位が異なるのが特徴です。
乳児期には頭や顔、体幹や四肢などに多く、幼小児期には頸部、四肢関節部、思春期・成人期には頭,頸,胸,背中などの上半身に出やすいと言われています。
また、患者の多くが「アトピー素因*」を持つとされていて、このこともアトピー性皮膚炎の診断の大きな判断基準となっています。
実際にアトピー性皮膚炎で悩まれている方はアレルギー性鼻炎や喘息を併発していることが多く、同時に治療することも少なくありません。
※アトピー素因とは
① 気管支喘息,アレルギー性鼻炎, 結膜炎,アトピー性皮膚炎のうちいずれか,あるいは 複数の疾患の既往歴や家族歴があること
② アレルギーと関係の深いIgE抗体を産生しやすい素因をもっていること
(「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」日本皮膚科学会)
アトピー性皮膚炎の原因は?
アトピー性皮膚炎の原因は実にさまざまです。
アトピー性皮膚炎診療ガイドラインでは「アトピー性皮膚炎は多病因性の疾患で、アトピー素因(体質)とバリア機能の脆弱性等に起因する皮膚を含む臓器の過敏を背景に、様々な病因が複合的に関わる事がアトピー性皮膚炎の病態形成に関与する」とされ、原因が複雑なことがうかがえます。
アトピー性皮膚炎の改善には、
かゆみや炎症・赤味など“症状”を改善する「対症療法」と症状が出ている“根本の原因(体質)”を改善する「根治療法」、大きく分けて2つのアプローチがありますが、対症療法だけでは根本原因が改善されず完治が難しく、根治療法だけでは、辛くて耐えがたい症状にすぐに対応することはできません。
そのため、漢方では、対症療法とともに、根治療法である体質改善をしっかり行うことに重きを置いています。
『皮膚は内臓の鏡』と言われるように、漢方では、アトピー性皮膚炎は皮膚表面だけの問題ではなく、カラダの内面の弱りや乱れなど“体質の崩れ”に原因があると考えられているからです。
ステロイドの長期使用は
副作用が心配
西洋医学による治療では、ステロイド剤で痒み(アレルギー症状)を抑え、保湿目的で非ステロイド系消炎剤やワセリンなどを併用する対症療法が一般的です。
ステロイド剤は効果が高いのですが、副作用の問題もあり、長期使用の場合は使用量に注意しなければなりません。
そのような際に漢方治療を導入することで、ステロイド剤の減量を図ることができます。
西洋医学的な治療も併用しながら、漢方治療の効果がでてきたところで徐々にステロイド剤を減らしていき、最終的に使用を中止できる場合もあります。
漢方でのアトピー性皮膚炎の
考え方
カラダの健康は“気(き)血(けつ)水(すい)”の3つによって保たれていると考えられている漢方における“体質の崩れ”は、気血水が乱れた状態を指します。
皮膚の場合、「血」によって肌細胞が作られ、「水」によって潤いが補われ、「気」によって発汗や免疫などさまざまな機能が調節され、そのおかげで常に健康な状態を保つことができるとされています。
“気血水”に不具合が生じると、アトピー性皮膚炎をはじめ、さまざまな皮膚トラブルが起こるというのが漢方の考え方です。
具体的には
「血」が不足したり、「血」の流れが滞ると皮膚に栄養がしっかり供給されず、ターンオーバーや肌の再生が乱れる原因になりますし、皮膚の潤い成分の産生も妨げられ皮膚の乾燥や落屑、かゆみの原因になります。
「水」が不足したり、「水」の巡りが滞ると、「水」が不足すると皮膚が乾燥しますし、逆に水の巡りが滞り停滞すると、浮腫やジュクジュクの原因になります。
「気」が不足すると、「気」が滞ると「気」が不足すると免疫機能が低下し、気が滞ると、免疫機能が乱れる原因になります。
ですから、アトピー性皮膚炎の改善には、気血水をしっかり整えることが大切です。
「気」は人間が生きていく上でとても大切な要素のひとつと考えられています。
「気」には「先天の気(せんてんのき)」と「後天の気(こうてんのき)」があります。
先天の気は、生まれながら持っている両親から受け継ぐもの。
後天の気は、生まれたあとに補うもので、自然界のきれいな外気(清気)と毎日の食事から得られるもの(水穀の精微)があります。
人間が楽しく元気に生活していくためには、先天の気はもちろん大切ですが、毎日食べる食事や環境は健康を維持するためにもっとも大切だと考えています。
気は不足するとエネルギー不足になるため、体が疲れやすくなったりやる気が起こらなくなったりします。
気が滞ると、イライラしたり、ため息をよくつくようになったりします。
「血」はカラダの中を流れる赤い液体のことで、西洋医学でいう血液を含む栄養物質を指しています。
「血」には精神活動を充実させ、全身に栄養を運んでカラダを潤す働きがあります。
「血」が十分にカラダに巡っていると、顔色は明るく、肌や髪の毛がうるおい、カラダの動きもよくなります。
また、精神状態が安定し、どんなことでも前向きに取り組むことができます。
「水」は血液以外の唾液・汗・リンパ液などの水分のことを指しています。
「水」は、カラダ全体に水分を充実させるため、肌・関節・臓腑などにうるおいを与えます。
「水」はカラダの中の余分な熱を抑え、汗や尿として排出する働きもあります。
カラダの中の「水」が不足すると、乾燥するため、喉が乾いたり、肌荒れが起きたり、便秘になったりすることもあります。
逆にカラダの中の「水」の流れが滞るとむくんだり、下痢を起こしたり、鼻水が出たりすることもあります。
生活改善も大切!
アトピー性皮膚炎を悪化させる生活習慣とは
アトピー性皮膚炎は生活習慣によって症状が大きく左右されやすい病気のひとつと言われています。
治療を頑張っているのに思ったように良くならないという人は特に、生活の中に潜んでいる悪化原因をしっかりと取り除きましょう。
① ダニ、ハウスダストなど
気密性が高く通気性の悪い現代の住宅では、住宅内部に空気や湿気がこもりやすく、ダニやハウスダストが増殖しやすいため、昔に比べてアトピー性皮膚炎の患者数が増加している一因となっているとの指摘があります。
特に、子供のアトピー性皮膚炎はダニやハウスダストの影響が大きく、住環境によって症状が左右することもありますので、通気性を良くする、掃除をこまめに行う、除湿をしっかり行うなど、普段から心がけましょう。
② 乱れた食生活
外食や偏食による栄養バランスの乱れや、ダイエットなど極端な食事制限による栄養不足など、食生活の乱れはアトピー性皮膚炎の症状に影響を与えます。
また甘いものや肉類、油、脂肪の多い食事などの摂りすぎもアトピー性皮膚炎の症状を悪化させやすいと言われています。
毎日の食卓を見直し、バランスの良い食事を心がけましょう。
③ ストレス
精神的ストレスもアトピー性皮膚炎を悪化させる大きな原因のひとつと言われています。
できるだけストレスをため込まないよう、こまめに発散することを心がけましょう。
食生活からサポート!
アトピー性皮膚炎におすすめの食べもの
漢方の考え方のひとつ五行において、肌は「肺*」に属します。
その「肺」のトラブルにおすすめなのが“白色の食材”です。
漢方では“白いものは肺を助ける”と言われ、重宝されてきました。そこで今回は白い食材の中でも、特に皮膚の乾燥におすすめの4つをご紹介します。
※「肺」グループには皮膚の他、肺や鼻、のど、気管支などの呼吸器系、粘膜、体毛、大腸などが入り、免疫などの防衛機能や水分循環の調節だけでなく、呼吸や発汗をコントロールするなどの働きをしていると考えられています。
・ 白きくらげ
白きくらげは、アミノ酸やミネラル、ビタミンなどを豊富に含み、とても栄養価が高い食材で、昔から滋養強壮食材のひとつとしても用いられてきました。
漢方ではカラダを潤す働きを助けると言われ、肌の乾燥や乾燥した咳改善の薬膳食材として重宝されています。
特に味がないため、トロトロに煮込んでデザートとしていただくだけでなく、水でもどしてサラダや炒め物に加えコリコリした食感を楽しむのもおすすめです。
・ 白ごま
白ごまはカラダを潤す働きを助けると言われていて、皮膚の乾燥や便秘改善の薬膳料理には欠かせない食材のひとつです。
すりつぶしたり、ペーストを活用するなど、消化しやすいかたちで食べるのがおすすめです。
・ 松の実
抗酸化の食材としても注目されている松の実は、栄養価が高く、古来中国では「仙人の霊薬」と言われ、不老長寿の食べものとして親しまれてきました。
漢方では皮膚の乾燥や乾燥した咳、便秘改善などの薬膳食材として使われています。
おやつにナッツとして食べるだけでなく、サラダや炒め物に加えたり、クッキーやケーキ、ジェノベーゼソースのアクセントにするなど、とても使いやすい食材です。
・ はとむぎ
漢方薬の生薬としてよく使われているハトムギ(ヨクイニン)は、水の巡りをサポートしたり、胃腸の働きを良くする手助けをすると言われています。
雑穀としてだけでなく、お茶として飲むのもおすすめです。
アトピー性皮膚炎で悩んでいる方は、生活習慣や食生活を今一度見直してみてはいかがでしょうか。
アトピー性皮膚炎は漢方相談の中でも常にトップに入る疾患のひとつ。
慢性化すると、良くなったり悪くなったりを繰り返すことも多く、治りにくいのが特徴で、西洋医学だけでなく漢方の門を叩かれる方も少なくありません。
症状は、季節、体調、ストレス、生理周期などによっても大きく変化します。
治癒までの経過が長いアトピー性皮膚炎の漢方治療では、患者さんの状態の変化に注意し、その時々で処方を変えながら治療のゴールを目指していきます。
当店は完全予約制となっております。
カウンセリングと説明をさせていただきますので、まずはお電話でご予約をお願いいたします。
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