更年期は女性のカラダがとても大きく変動し、女性のカラダにとっては大きな転換期です。この時期は女性のカラダの要である卵巣の機能が大幅に衰えていきます。卵巣の機能の衰えに伴い、女性にとってとても重要な女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌が急激に減少していきます。
季節の変わり目に風邪をひいたり、生理前の女性ホルモンの変化で体調を崩すなど、少しの変化でも揺さぶられてしまうほど繊細な女性のカラダにとって、更年期のこの変化はもはや嵐のようなものです。そのため、多くの女性がこの変化について行けず、体調を崩し、さまざまなトラブルを起こしやすくなるのです。
女性ホルモン・エストロゲンの分泌の急激な減少により生じる、この時期に起こりやすいさまざまな不調を「更年期障害」や「更年期症状」と呼んでいます。
しかし、すべての女性の更年期の症状が辛いとは限りません。とても辛い日々を過ごす人がいる一方で、大きな不調もなく楽に過ごす人がいるのも事実です。このように人による個人差が大きいのも更年期障害の特徴です。
更年期の漢方の考え方
いったいこの違いはどこからくるのでしょう。漢方の考え方では体質の違いが影響していると考えています。
漢方では、カラダは「気(き)」、「血(けつ)」、「水(すい)」の3つの柱で支えられていると考えられています。気とは元気の源である“生命エネルギー”であると同時に、精神をコントロールする気持ちの“気”、さらにはカラダのすべてを動かしコントロールする“機能”で血はカラダの栄養でありカラダの物質を作るための原料になると考えられていて、血液だけでなく、皮膚や髪の毛、爪、筋肉、骨、臓器、さらにはホルモンに至るまでカラダのあらゆる物質は血によって修復・増強され健康な状態に保たれているとされています。水とはカラダのすべての水分の総称で、体液だけでなく、汗や唾液、胃液、腸液、尿のような分泌液や排泄液なども入ります。水はカラダを潤す役割とともに、カラダにたまった不要な老廃物を尿や汗、鼻水などと共に体外へ排出する役割も担っています。
この気・血・水の3つの柱が太く頑丈であれば、風が吹こうが嵐が来ようが、揺らぐことはありません。3つの柱の状態は一人一人違います。この違いが体質の違いです。柱の状態によって、更年期という嵐に耐えられるかどうかで決まります。
気、血、水が不足している状態を「気虚(ききょ)」「血虚(けっきょ)」「陰虚(いんきょ)」、また、流れが滞っている状態を「気滞(きたい)」「瘀血(おけつ)」「水滞(すいたい)といいます。
更年期障害の症状に油断は禁物!
時を追う毎に症状が変化!?
更年期障害のもうひとつの大きな特徴と言われているのが、“時間とともに症状が変化する”という点です。更年期といわれる約10年の間、症状は一定なのではなく、年月と共に新たな症状がでたり、悪化したり、どんどん変化すると言われています。
漢方では、更年期の女性のカラダは“気→血→水”の順に柱が崩れやすいと考えていて更年期障害の症状もまた“気の不調→血の不調→水の不調”の順に変化しやすいと言われています。
初期 | 気の不調(気虚・気滞) | 憂鬱やイライラなどの精神不安顔が赤くなる、ほてり、のぼせなどの熱感急な発汗(ホットフラッシュ)、頻尿など |
中期 | 血の不調(血虚・瘀血) | 動悸・息切れ、手足の冷え、手足の脱力感やしびれ、不眠、焦燥感や不安感、高血圧、頭痛、頭重月経の乱れなど |
後期 | 水の不調(陰虚・水滞) | 悪心、嘔吐、めまい、耳鳴りなど |
病院では更年期障害の薬物治療は、基本的にホルモン補充療法(HRT)を行います。更年期になって減少した女性ホルモンを、飲み薬や貼り薬などで補充して安定させる治療方法です。一方、漢方医学では、体のバランスを整えることで改善することを目指しています。
そして、昔から「血の道症」として更年期障害に対する経験が蓄積されていて、有効的な方剤も多いです。
また、いま症状が出ていなくても、加齢と共にこれから症状が出る可能性があるのが更年期障害です。漢方で養生することは必要かもしれません。
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